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Farmer Profile

新垣 貞治
(にいがき さだはる)

新垣 貞治

1982年、神奈川県生まれ。大学で写真を専攻。卒業後にフリーのカメラマンになるも、自然と携わる仕事に憧れ、長野県松本市の自然農法センターで有機栽培について研修を受けた後、松本市で新規就農。稲作を中心に、より自然に近い農法を心掛けた営農を行なう。

お米にこだわる自然人

 とてもフランクで、気さくな人柄の新垣さん。都市部での農業を通して、より心身ともに豊かな人を増やしたいという想いの元、研修生の齋藤さんと共に、アルプスの広がる長野県松本市でこだわりの米作りに取り組まれています。そんな新垣さんと齋藤さんに営農に対するお話を伺ってきました。

上村 聖季

担当:上村

ーー新垣さんが農業を始められたのはいつ頃でしょうか?

 就農前に、松本の自然農法センターという有機栽培を中心とした試験場で研修を行なった後、ガッキーファームとして畑をスタートさせたのが2011年なので、今年で5年目になります。

ーー新垣さんは、農業を始める前はどのようなお仕事をされていたのでしょうか?

 松本に来る前は2年間、フリーランスのカメラマンをしていました。大学も芸術学部の写真学科を卒業していたので。ただ、カメラマンって・・・

 基本的には単価がすごく安い仕事がほとんどで、薄利多売みたいな状態だったんですよ。あとは業界自体もかなり縮小傾向傾向にあって。

 業界の先輩達からは「10年間やっていればライバル達が辞めていくから、ちゃんと食えるようになるよ」っていわれて・・・。ライバルがいなくなるのを待つような業界って、その間はただの忍耐というか、楽しくないなと。

 さらに、お客さんもほとんどが、写真の質ではなく、とにかく安く仕上げてくださいっていう感じで。そうなると、こっちも出来るだけ時間も手間も、機材の質も上げないようにするしかなくて。

 本当に写真が撮りたければ、他の仕事をしながら、趣味で撮ればいいやって思って。

ーーそこから農業という仕事を選ばれたのはなぜですか?

 写真の仕事から離れるときに、漠然とですが、自然を相手にする仕事が良いなって思うようになって。元々地元が農業がある程度盛んな茅ヶ崎市(神奈川県)だったので、農業や林業など1次産業の仕事を中心に、インターネットなどを使っていろいろ調べていく中で、松本市(長野県)の研修先を見つけました。

 当時、無料で1年間研修が出来るということだったので、とりあえず1年間やるだけやってみて考えようという初めは軽い感じで始めたのが、農業のキャリアをスタートさせたきっかけですね。

ーー農業を始められる前から有機栽培を考えられていたのですか?

 自然に関わる仕事がしたかったので、より自然に近い農業をしたいという想いはありました。慣行栽培(農薬や化学肥料を使う一般的な栽培方法)は何となく個人的に科学的な感じがしていて。

 もちろん、農家も生計を立てていかなければならないので、農薬や化学肥料を使われる生産者さんを全く否定するものではないんですが。やっぱり何が面白いって、あまり人の力でどうこうっていうよりは、作物の表情を見て・・・

それぞれの作物のスピードで育っていく見るのが面白いんですよ。

ーー人がつくるというよりは、育ってもらうというイメージですね。

 その通りですね。まぁ、多少こっちの都合もあるので、少しは手を加える必要はあるのですが、ガリガリと矯正するんではなくて、ある程度、野菜の都合で育つのをお手伝いしてあげるようなスタイルですね。

ーー1年目から農薬も肥料も使われない自然栽培で始められたのですか?

 そうですね。ただ、研修先では、名前は自然農法なんですが、そこでは、有機肥料も使う有機栽培について教わっていたんですよ。そこで教わったことが、畑を借りて1年目というのは、そこの土がどのような状態か分からない状況なので、まずは農薬はもちろんのこと、有機肥料も何も入れずに作物を育てることで、その畑の本当の地力が分かると同時に、そこの土地にあった栽培管理をする方が良いと教わったことがあり、それを実践するという意味で、無農薬、無肥料での栽培を始めました。

 例えば、レタスやキャベツなど球状になる野菜は、生育が遅いと葉がどんどん開いていって、球状に葉が巻きずらいため、無肥料では難しいと言われているのですが、(前の畑の残肥もあったのかもしれませんが)1年目から普通にしっかりとしたレタスやキャベツが出来たんですよ。

 入れる必要のない肥料を無理に畑に投入するための労力や、肥料過多による味の低下、環境負荷などを考えると、2年目以降も肥料を入れる必要はないなと。そこからずっと畑も田んぼも無肥料でやっています。

ーー現在は研修生の齋藤さんとおふたりで、どういう役割り分担でやられているのでしょうか?

 研修生として2年前から入ってくれた齋藤さんに、飲食店向けに卸す野菜を作っている畑を今年から任せています。僕の方は田んぼをメインで管理しています。

ーー新垣さんのお米づくりのこだわりについて教えてください。

 うちのお米は、もちろん農薬も肥料も使わずに栽培しているというこだわりはもちろんあるのですが、その他のこだわりとしては、はざ掛け※をしてお米を自然乾燥させていることがあります。

※ 刈り取った稲を逆さにして、天日乾燥させること。機械の乾燥機 が普及したことにより、
  天日乾燥を行なう米の生産者は珍しくなった。

ーー前回食べさせて頂いたんですが、びっくりするくらいお米が甘かったです!

 今は赤外線だとかなんとかで乾燥機の質も良くなってきてはいるんですけど、理屈から言うと、機械乾燥だと米はまだ完熟の状態じゃないんですよ。成熟していない稲を刈り入れて、完熟じゃない状態で機械で無理やり乾燥させるんですよ。

 一方で、はざ掛けを行なうと、刈り取り後に何日もかけてゆっくりと自然乾燥させるので、茎に残った旨味を米一粒一粒に行き届かせて、お米一粒一粒が完熟した状態になって、さらに美味しいお米に仕上がります。

ーーだからあれだけ市販のお米とは全く違う旨味が出ているのですね。でもはざ掛けって稲を一束ずつ丁寧に掛けなければならないので、すごく大変な作業ですよね?

 正直、作業はすごく大変です。あとは乾燥させる場所の確保もかなり大変で。うちの場合、5反3畝の内、半分は酒米を作っていて、その分は酒蔵に入れておけるので、スペース的にはギリギリですが、コシヒカリは全てはざ掛けが出来ています。

ーーおふたりにとって農業の魅力はどのようなところでしょうか?

新垣:何と言っても、楽しいというか、面白いです。農業って考えれば考えるほどすごく複雑で、やってみると分かるんですがマニュアル化するのってすごく難しいんですよ。でも、僕にとっては逆にそこが農業の魅力でもあります。

ーー農業は工業と違って、様々な環境条件を人間がコントロール出来ないことに加えて、その環境条件も毎年変化するので、正解を見つけられないという難しさがありますよね。

新垣:ただ、かならず作物から何かしらの反応はあるので。自分が考え抜いて出した答えに対して・・・

作物に変化があって、それを毎回毎回繰り返して少しずつ改善していくみたいな。どっちかというと研究の仕事に近いかもしれないですね。

齋藤:農業って、本当に自然の営みというか、ここで言う自然というのは大自然とかの自然じゃなくて、”人間本来のあり方”という意味で、全然違和感がない生き方を農業はできるというところが私にとっての農業の魅力ですね。

 人としての原点的というんでしょうか。

ーー原点というのは、必要不可欠な食というものを自分で育てて、食べてということでしょうか?

齋藤:食ももちろんなんですけど、体を使って、自然と関わって、土と触れてっていうそういう部分が大きいですね。

ーー職業という範疇を越えて、ライフスタイル的な意味での農業ということですね。

新垣:農業をやっていると、いろんなものがどんどん自分で賄えるようになってくるんですよ。食べ物はもちろんそうですし、自分で機械をいじったりとか。農家さんて、百の仕事をするっていう意味で百姓とかって言われますけど、自給自足の生活って実は以外に簡単なんですよ。

 自分もそうでしたけど、東京にいると自給自足の生活ってすごくハードル高いじゃないですか。それぞれがレベルの高いものしかないから、いきなりそこにいかなきゃってなって、自分じゃ無理だなって諦めちゃうんですよね。

 でも、まずはそんなに高いレベルを求めずに、下の方から少しずつやっていくと実は意外と何でもできちゃうんですよね。

 例えば、味噌づくりなんですが、最初は材料を全て仕入れていたものが、大豆も米も自分達で作るようになったら、それで仕込んでやってみます。そのうち米で麹が作れるようになったりとか、段々こうできるんじゃないって、レベルも上がっていって。今だったら、ネットで情報はいくらでも探せる時代なので、本当に何でも作れちゃいますよ。

 田舎にいて、土地があれば、大抵のことは本当に自分でなんでもできますし、そこのところが田舎の生活、農業という仕事の面白さでもあります。ただ、お金に関してはかなり疎くなりますけどね・・・(笑)

ーー農業をやられていて大変なことはどんなことでしょうか?

新垣:作業で集中しているときなんかは肉体的に辛いときはありますね。真夏の暑い時期に玉ねぎの収穫が大変な時期があって、あまりにキツくて吐いたりしたこともありましたね(笑)

 でもそれって、そんな大変じゃないんですよ。なんていうんすかね、悩みっていう感じではないので。本当にやりたくなくて、都会の会社生活でよく聞くような、ストレスで胃に穴が空くみたいな・・・

そんな辛さはないですね。

ーー精神的な辛さではないということですね。

新垣:そうなんですよ。疲労はあってもストレスはないんですよね。

 あと少し大変なことっていったら、近隣の農家さんとのコミュニケーションですかね。最近も、隣の農家さんに呼ばれて、少し怒られたんですけど。

ーーそのとき怒られた理由は何だったんでしょうか?

 自分の田んぼとその方の田んぼの間にある畦道の管理についてだったんですけど、そういう部分って明確なルールみたいなものはなくて、お互いの共通管理みたいなことになるんですけど、そのときは、怒られた後にその生産者さんの勘違いだったってことになって。

 ここら辺は都市部とは違って、それぞれの農家さんの考え方や文化の違い次第なので、外から来た自分にとっては、地方独自の難しさという感じはしていますね。

ーー齋藤さんの一日のスケジュールについて教えて頂けますか?

齋藤:朝5時くらいには起床して、今の時期(4月)だと苗を見に来て、それぞれの苗がしっかりと育っているか観察することから一日がスタートしますね。

 その後は、気温を見ながら畑のトンネル※を外してあげたり、ハウスを開け閉めしたりします。合間に畑で除草をしたり、間引きの作業を行ったり、そうした作業をしているとあっという間に日が暮れていますね。

※ 冬場の防寒・防霜対策、生育促進や病害虫対策のために、畑に布やビニールのようなもの
  をかぶせる栽培技術。

ーー育苗が定植するまでや、種まきで芽が出るまでは心配になったりするんじゃないですか?

齋藤:基本的には常に心配していますね。定植した後も、ちゃんと育ってるかなぁって常に頭のなかにありますね。

ーーその辺は会社経営と似てますね。心休まる時はない感じですね。

齋藤:そうですね。なので、人と会って、話をしていても、頭の中の半分くらいは畑のことを考えているときもありますね。すごく失礼だなとは思っているのですが(笑)

ーー新垣さんが今後やっていきたい農業のカタチについて教えてください。

新垣:自分は神奈川の出身なので、将来的には、向こうに農地を作りたいんですよねそれは自分がやる畑や田んぼではなくて。東京の人たちが、1a(100㎡)とか家庭菜園みたいな形で行なってもらって。

 そうすると分かるじゃないですか。野菜を見る目が育つと、すなわち消費者の目が厳しくなれば、それに合わせて・・・

農家のレベルも上がるはずで。今、皆さん、無農薬や有機栽培の食材が欲しいって言うんですけど、皆さんの求める値段との兼ね合いが難しい。

 ただ、実際に自分で少しでも農作物を作ってみれば、こういうものなんだって、少しでも理解してもらうことができれば、自然とそうした消費者と生産者のギャップって縮まっていくものじゃないのかなと。

ーーたしかに、日本の農産物は品質の割にかなり安く売られているような気がしています。

新垣:農作物をとにかく安くつくるためには、農薬や肥料などの農業のやり方もそうですが、相当大規模にやる必要があって、農業機械だとか、設備にものすごくお金をかけなければいけないんですよ。

 そしてそういう大規模な農家さんが、作った農作物を売ってそれで生計を立てているかというと、実は結構コストなどを考慮するとトントンだったりして。じゃあどうやって生計を立てているのかっていうと、ほとんどが補助金だったりするんですよね。

 一方で、作り方にこだわって、安全で質の高い食材をつくったとしても、最終的には買ってくださる消費者の方々がその食材を評価して、適正な価格で買って頂くようにならないと、中々、質にこだわって作る生産者には厳しいですね。

 そういう意味でも、やっぱり実際に自分で畑などをやってもらったりして。土に触って、畑をやってみるといろんな意味でけっこう勉強になったりするんですよ。そもそも農業って基本的に画一的じゃないんで。

ーー特に都市部の人達が、小さくても土に自分で触れて、作物を作ってみるというのは大切な気がしますね。

新垣:農業って、野菜とかお米とか、同じように管理しててもどうしても規格などばらつきが出てしまうし、それって農業だけじゃなくて、人間社会の生活にも言えることだと思うんですよね。

 東京の中では、全てが水平直角で、もうある程度全部決まっていたりするじゃないですか。そこに住む人もある程度その型にハマってないとだめだとか。

 東京の生活は、そういう風に水平直角のものに人間が合わせないといけないのですごく疲れるんですよね。そういう意味では、こっちの方が楽といえば、楽。自然に近いので、親和性があるんですね。

ーー農業に携わられて、新垣さんご自身が成長したなと思うところはありますか?

新垣:そうですね。やはり、日々自然を相手にするので、どうしても思うようにいかないことも多いのですが、逆に、思い通りにいかないということに慣れてくると、いろいろなものが楽になってくるんですよね。

 世の中の多くのことは、自分の思い通りにはならないということに気づくだけで、他の人にも寛容になったりすることができて。以前、関東にいた頃は、心が乾いてた感じで、思い通りにいかないこととかが許せなかったというか。

 ただ、農業をやっていると許すしか選択肢はないので(笑)この年になって、ずっとものづくりをして、ずっと様々なことを考えたりとか、すごく日々いろいろなことを学んでいますね。

ーー他者を許すことのできる考え方や心の余裕は、今の都市部の生活にはすごく大切なことなように思います。

新垣:個人的に思うのは、小さき頃に作物を自分で育ててみる体験をして、食べ物を食べて生きるという営みを本当にちょっとでいいから経験できるような機会が都市部の生活の中にあれば、いろんなことが変わっていくと思うんですよね。

 自分はこっち(松本市)に来て、今の生活はすごく充実しているんですけど、やっぱり自分の地元は向こう(関東)だし、東京とかで満員電車に乗ると、吐き気や腹痛になったりとかいう人もいて、そういう気持ちはすごく分かるので、そうした問題にアプローチしたいという気持ちはあります。

 ただ、地方分権とか言っても実現されるまでに時間がかかりますし、仮に地方分権が実現したとしても地方で同じことが起きたら意味がないので。「壊す」とか「戻す」んじゃなくて、都市を「進化させる」みたいな。

 それを促進させるひとつのカギが農業とか土地などで、自然をそこに加えることで、より豊かで幸せな生き方がみんな出来るんじゃないかなと思っています。