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アスパラ菜 | ||||||||||||
茎ブロッコリ | ||||||||||||
紅芯大根、黒大根 | ||||||||||||
カラフルにんじん | ||||||||||||
ほうれんそう | ||||||||||||
イタリアンパセリ | ||||||||||||
あやめ雪かぶ | ||||||||||||
キャベツ | ||||||||||||
なす、トマト | ||||||||||||
白菜、下仁田ねぎ | ||||||||||||
さつまいも | ||||||||||||
人参Mixジュース |
宮田 雅樹
(みやた まさき)
多様な生業で生計を立てる百姓を志し、農業生産法人にて2年間の研修を行なう。そこで使用していた大量の農薬で自身のからだに変調をきたしたこと、お客さんと直接顔の見えるやり取りがしたいという思いから、有機農家として独立。なごみ農園を設立する。営農歴14年目を迎えるベテラン農家で、現在は約2町の広さの畑で同じ志しを持つ研修生と共に農業に励む。奥さんと元気なお子さん2人の4人家族。
味噌の仕込みから竹細工による籠作り、作業場の建物づくりなど、本業の農業にとどまらず様々な生業を持つ宮田さん。全てを他から買ってくることが当たり前となっている現代社会から少し離れ、身の回りのことをできるかぎり自給する暮らしを目指す「百姓」農家さんです。
担当:上村
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ーー有機農業を選ばれた理由って何だったんですか?
農家になりたくて百姓の暮らしを始めたのですが、最初に入った研修先が一般的な市場出しをしている大規模な慣行栽培の農業生産法人さんでした。実際に現場に入ってこう色んな状況を知ると、やっぱりちょっと違うなぁと思って(笑)。
ーーそんなにイメージされていた農業と違ったんですか?
すごい大きな面積だったので毎日のようにいろんな圃場を巡回して農薬を撒いていました。本当にすごいペースで・・・
農薬を散布するんですよね。ただ、最初は特にそのことも問題視はしていなかったんです。別に国の基準を満たした農薬なのでいいんじゃないかと。
だけど、自分の身体にね、変調が出たんですよ。マスクしててもやっぱり農薬を吸い込んでしまう。ある日、仕事終わって家に帰って、いつも通り晩酌をしたんですけど、いつもは美味しいはずのビールがすごく不味かったんですよ。不味い上に、身体も気持ち悪くなっちゃって。こういうやり方の農業を続けるのは、自分の身体も続かないし、育てた作物をお客さんにも食べさせたいと思わなかったので、これは無理だなぁって。
ーーご自身の身体に影響が出たんですね。研修は何年くらいやられてたんですか?
2年間の研修だったんですけど、研修は初めに2年間と決めて入ったので、それはそれで最後までちゃんとやりました。ただ、やってるうちにお客さんと直接やり取りをしたいなという気持ちと、慣行農業じゃなくて有機農業をやりたいという気持ちがどんどん湧いてきていて。
なので研修後に独立して有機農家として営農を始めました。直接お客さんと取引をしたいという想いから、不特定多数に販売する市場への出荷も一切やっていません。
ーー有機農業の中でも栽培方法は様々ですが、宮田さんはどのような有機栽培を実践されているんですか?
農薬や除草剤、化学肥料は一切使っていません。圃場全体の約9割くらいの面積で植物性堆肥のみを使った栽培を、残り1割の面積で有機肥料や堆肥も一切入れない自然栽培で作物を作っています。
ーー全体の1割だけ自然栽培をやられている理由というのはなぜでしょうか?
個人的にはどんどん自然栽培にしていきたいんですけど、どんな場合でも自然栽培が必ず良いかというとそうとも思っていなくて。自然栽培というのはどこでも必ず同じようにできるという栽培方法ではなくて、同じエリアでも・・・
畑が違えば、物理的な構造の問題で自然栽培に適さない畑も多かったりします。
ーー物理的な構造で適さない畑とは具体的にどのような畑のことでしょうか?
大きくは2つパターンがあって。一つが、元々耕作放棄地だったような畑で、土が非常に固くなっていて植物が根をはることの出来ないような土地です。そういうところは、ツルハシもろくに入らなかったりします。さらに、ちょっと掘ると、すぐに石や砂利が出てきてしまいます。
二つ目のパターンが、地下水の水位が高い土地質で水はけの悪い畑です。水はけが悪いと野菜の栽培にはちょっと厳しいです。他の農家さんの中には、そういう土地は畑にするのを諦めて田んぼにしちゃってる方も多かったりします。
作物の成長とその時々の土壌環境のバランスを見極めることが農家の重要な仕事の一つだと思っています
ーーそもそもなぜ農業をやりたいと思われたんですか?
実は必ずしも農業じゃなくても良かったんです。魚とる漁師でも良かったし森のきこりでも良かったんですが、要は日の当たる仕事がしたくて。一般的に言われるところの1次産業ですね。
会社員していたときは子供の起きている姿がほとんど見れませんでした。毎日子どもの寝静まった遅い時間に帰宅するのが普通だったので。そんなときに、本当にこれでいいのかなってふと思ったんですよ。あんまりいろんなこと考えた訳ではなくて、本当にふとそれだけ思ったんです。子供のことを。
ーーそういうコトがあったんですね。
あとは、今の都会の生活って極度に分業が進んでしまっているような気がしていて。自分の身の回りの物事を実は自分自身が殆ど理解していない状態に違和感を感じていたところはありました。今は、自分の職業を名乗る時は必ず"百姓"ですって言うようにしています。昔の百姓がそうであったように、身の回りのことを中心に、百の生業をこなせる人間になりたいと思っています。
そういう意味ではやりたいこといっぱいあって。例えば、お味噌汁一つ作るのにも鰹節をするとして、そのカツオを自分で釣って、燻して鰹節を作ってみたい。
将来的には、畑で作業するだけじゃなくて、海の仕事も山の仕事もやれるような人間になりたいですね。
ーー宮田さんは消費者の方とのコミュニケーションを大切にされているとのことなのですが、実際にどのようなやり取りをされたりするのでしょうか?
先日は味噌作り体験っていうのをお客さんと一緒にやりました。味噌づくりをやりながら、おいしい野菜の見分け方講座みたいなものもやったりして。個人的には、その場限りしかできないような味噌作りではなくて、できるだけ家庭でも簡単に作れるような味噌作りのやり方を考えて教えるようにしました。出来れば、その後ご自宅でご自身で第二弾を仕込んでくださいみたいな感じで。
味噌作り体験に限らず、お客さんとの体験イベントを開催することで、自分の口に入るものは出来る限り自分でつくりたいという意識を少しでも持ってもらいたいのと・・・
自分でやってみることって、実は意外とそれほど難しいことじゃないということに気づいてもらえるような機会を提供出来ればと思っています。
ーー味噌作り体験ですか!まさに百姓ですね。
他にも例えば、消費者の方に畑に来てもらって、まず遊んでもらうんですよ、遊んでもらうっていうのは虫探しとか草探しをして、まず楽しんでもらって。次に収穫を一緒にしてもらって、収穫したものをその場で調理して食べてもらったりします。要は、出来る限りお客さんと接して、畑のことや農業の楽しさ、食べ物のことなどを自身の体験から理解してもらえるような場作りをしたいと思っています
これは個人的に思っていることなんですけど、今の世の中、現代文明からちょこっと離れた方が実はみんな幸せになるんじゃないかなと思うんですよ。今竹細工をやりだしていて、野菜を収穫するカゴとかイベントに持ってくときの器とかを竹細工で自分で作って、それを使いたいなと。
ゼロからやるって大変ではあるんですけど、でもそれ以上に楽しいんですよね。ビールも麦から作って仕込むとか、どぶろくとかも自分で仕込んだり。もちろんあくまでも自家消費用として(笑)。豊かな生活を送るという意味では、そういうこともすごく大切なんじゃないかなって思うんですよ。
ーー宮田さんがそうした考えに至ったキッカケとかって何だったんでしょうか?
単純に日々の生活で使っている味噌や醤油をスーパーで何も考えずに買って来ているというのが、自分としては何かおかしいなと思ったんですよね。今の社会って、みんな他人からモノやサービスを買うことに慣れ過ぎているような気がしていて。
でも、本当は日本人って昔からわりと器用だと思うので。やってみれば結構身の回りのことは自分で出来たりすると思うんですよ。
お酒がどうやってできるのかも全然知らずに・・・
みんなお酒飲んでますしね。昔はみんなが当たり前のように知っていたことから、現代人って離れすぎちゃってて。でも、実はそういうところに生活の楽しさや面白さが結構あったりするんじゃないかなと。
ーーたしかにそう考えると、ふだん意識していないだけで、身の回りにはもっと楽しいことや面白いことがたくさんあるのかもしれないですね!逆に宮田さんが、この14年間の中で辛かった時期とか出来事ってありますか?
そんなにはないんですけど、ただ焦った時期はあります。一応、農業で生計を立てることを決めたときに、3年立っても生活がしっかりと出来ていなかったらその時はすっぱり農業を辞めようと思っていたんですよ。これは自分を戒めるためになんですが。
ただ、ご存知の通り、農業ってそんなに甘い仕事ではなくて、1年目も2年目ももちろん赤字だったんですよね。3年目の途中でこれはやばいぞと思って。死に物狂いってやつですよね。自分もがんばるんですけど、そういうときって、そんな自分の姿を見てる人が助けてくれるんですよ。それで何とか3年目を乗り切れたんですよ。
ーーたしかに、必死になってひとつのことに取り組んでいる人に対しては、理由がなくても何か力になりたいと思ったりしますね。
販売に困っていたときに売り先を紹介してくれたりと、本当にいろいろなことで周りの方には助けられました。
ーー宮田さんが今後目指されている生き方は、どんな生き方でしょうか?
楽しいなと思うことをできるだけ素直にやっていきたいですね。みんなそうじゃないですか?
あと、農家を増やしたいって想いもありますね。様々な考え方を持つ有機農家を増やすと、いろいろと楽しいことも増えるような気がしていて。競合するからこれ以上増やすなっていう人もいるんですけどね(笑)。でも自分はそんなことはないと思っていますし、こんなに楽しい仕事をやりたいと思う人が増えてくれたらうれしいなと思っています。
ーー楽しいと思う事を素直にやる。単純ですがとても大切なことですね。
例えば、僕は昔から大豆がやりたかったんですが、大豆を作るために使う共同の機械とかあれば良いのになぁと思っていたんですね。そこで小さくてもまずは自分でやってみる。そうすると自分に近い考えの人がちょっとずつ増えてきて、「俺も大豆やります」というような生産者が出てくるんですよね。そこで自分の夢も叶うわけですよ。
これでやっと味噌をガッチリ仕込んだり豆乳作ったりができるようになるなと。自分一人とか少ない人数だとちょっとやれないことが段々とできてくるようになるんですよね。
そういう仲間が増えてくると、これもできるし、あれもできるっていうような事がどんどん増えて、楽しい事もどんどん出来るようになります。